2020/08/16

新たな期待も恐怖へ変化

 

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中学は小学校より少し広い地域から生徒が集まった学校でした。

1学年3クラスの90人ほど、
全校生徒合わせて300人くらいです。

田舎の学校なので規模は小さいですが、
小学校の時よりは人の数も格段に増えました。

当然僕の小学生時代を知らない友達もたくさんいます。

小学校初期から中期:ガキ大将 → 小学校後期:大人しくて引っ込み思案

このあたりの微妙なポジションの変容を
全く知らない友達と話す機会ができました。

これには少し新鮮な気持ちがうまれました。

別に僕の口習が変化している訳ではありませんが、
環境が変わったことでなんとなく新しいスタートがきれそうな気がしていました。

地獄の合唱で体得したスキルを武器に、
僕は相手に息がかからないような絶妙な距離感で人と会話するようになっていました。

(これからできる友達には自分の口習の事実に気付かれないようにする!)

この“絶妙な距離感の会話”は、もはや自ら意識しなくても
無意識のレベルで自然に発動するレベルに落とし込まれていました。

11歳でこのスキルに目覚め、
2年間修練を積んだことでマスターレベルへと成長していました。

人間は意識してこなすレベルはまだまだ、
無意識で体が勝手に反応する段階でようやく
「スキルを体得した」といえるのです。

少し話が逸れましたが、
マスタースキルの甲斐もあってか、
新たな友達はすぐにできました。

しかもクラスでもわりと明るい
友達グループに入会することができました。

驚くべき成果です。

このグループは休日に誰かのウチに集まってゲームをしたり、
自転車で少し都会に買い物に出掛けたり、
あるときは誰かのウチに泊まって夜中ずっと好きな子の話をしたり、
僕にとってはなかなか活発的でエキサイティングなグループでした。

いわゆる“明るい方の人たち”の集団に入りこめたこの成果は、
自分も明るい人間へと生まれ変わる自信を取り戻す機会になりました。

忘れかけていた、2年前のあの自信を少し取り戻し始めていたのです。

もうオレは“このままイケる”だろう。

暗かった小学校時代の記憶を捨てて、
これからまた新しくスタートするんだ、
そんな前向きな感情が心には芽生えていました。

 

中学での再デビューをうまく成功させた僕は、
明るいグループに混じって中学生活をエンジョイしていました。

授業中も躊躇なく発言しました。

女子を少しからかったり、よく目が合う子に対して
(あの子はオレのことが好きなんじゃないか?)
という青春時代の男子特有のサブい勘違いをしたり、
隣に女子がいるだけで何か起こるんじゃないか?
と、ただドキドキしたり。

ついにはラブレターを受け取るまでになり、
僕もラブレターで返事を書いて初めての彼女ができました。

中学1年生の頃です。

この彼女とは付き合ってから一言も会話することなく、
自然消滅というカタチでいつの間にか関係が終了していました。

付き合う前は普通に喋っていたのに、
付き合った途端に意識して全く会話できなくなってしまったのです。

終わり方が変な感じだったので、
いま考えると相手に申し訳ない気持ちもあります。

このようにほろ苦く甘酸っぱい青春を体験する余裕が生まれるほど、
僕の性格はわずか短期間で変化していたのです。

 

ただ一つだけ・・気がかりがありました。

 

グループがあればそのグループには自然とリーダーがいます。

僕の所属するグループにもリーダー的な友達がいました。

彼の家は商売をしていて、
おそらく裕福な家庭だったと思います。

大きな家、僕にはなかった広い自分の部屋には
最新のゲーム機が並んでいました。

その友達を一言で表現すると“ぶっきらぼう”。

・嫌いな子には「嫌い」とハッキリ言う
・やりたくない事は「オレやらない」とハッキリ言う

自分の思った事、自分の意思を
ズバッと表現するタイプの人間でした。

それはまさに小学校時代の自分を少し重ねるほど、
周りがドキッとするような瞬間もけっこうありました。

そんなぶっきらぼうな友達は、僕にとって恐怖の存在でした。

(いつ口習の事がバレるか・・。)
(いつ、「お前口臭いよ」と言われるか・・。)

グループで仲良く遊んではいたけれど、
恐怖は常に頭のどこかにありました。

自分がようやく取り戻したこの生活、
このポジションを、この友達のためらいのない一言で
ぶち壊されそうな予感がしていました。

そしてその友達がある日、こんな事を言い出しました。

「あいつ(女の子)キモい!」

いつものように自分の感情をハッキリと表現しました。

別の友達が「なんでそう思うの?」と聞くとその子がこう言いました。

「なんか、あいつって息臭そうやん!」

ためらいもなく「息が臭い」というセリフをズバッと言い放ちました。

僕は友達とハハハッ!と笑いながらも、
心臓はドクンドクンッ!と大きな鼓動を鳴らしていました。

その友達が放ったこのセリフの意図を読み取ろうと、
頭の中でぐるぐると考えを巡らせていました。

(これって・・もしかしたらオレの事を言ってるのかな・・。)

その場は笑って過ごしたけど、自分の席に戻ってからは色々と想像してしまいました。

(もしかしたら間接的に息の臭いヤツは嫌だって言ったのかな?)
(グループに息が臭い奴がいるって意味なのかな?)
(もしかして他の友達もそう思ってるのかな?)

考え出すとだんだん不安になってきました。

それからは不安は大きくなる一方です。

この日は何をしていても一日中こんな想像ばかりしていました。

この不安は一日では収まりません。

それ以降友達と話している時も、
相手に自分の口習を気づかれていないかどうか
気になって仕方がありません。

距離をとる会話をマスターしていたつもりだったのに、
もはやこれまでの距離感ですら安全圏なのかもわからなくなってきました。

 

中学3年になるまで不安が消えることはありませんでした。

授業中も休み時間も、給食の時間も掃除の時間も、部活の時間もずーっと。

誰と何をしていても頭の片隅に不安は存在していて、
100パーセント心を解放して学校生活を
楽しむことができなくなっていきました。

子供にとっては尋常でない対人関係のストレスが心に蓄積されていきました。

僕のキャパを超えるのは時間の問題でした。

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