日に日に感じる解放感

 

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「べき思考」というものがある。

”人は誠実であるべき”
”女性は慎ましくあるべき”
”若いうちに無茶をしておくべき”

一つ一つの物事に関して自分なりの道理をもっている状態。

それが当然だと思っているので、
当の本人は”自分なりの道理”だとは思っていない。

その道理は単なる「常識」だと思っている。

そんなの当たり前でしょ? といった具合に。

その主張する道理が正しいか間違っているかに限らず、
そのような状態にある思考のことを「べき思考」という。

いわば、常識というのも一つの「べき思考」であるといえる。

 

 

自分はべき思考の塊だった。

人はこうでなければいけないというルールで自分を縛りつけ、
かなり凝り固まった生き方をしていた。

そのおかげで人の意見に左右されず自分の思う道を真っ直ぐに進んでこれたけれど、
他人と相対した時にほとんど会話にならないような場面が多々あった。

単なる世間話ですらも、口論のタネになってしまうような感じだった。

きっと自分の身体が価値観でガチガチに塗り固められていて、
他人の考えや意見を受け入れる余地がなかったのだろう。

「いや、それは違うと思うね」

相手が何か話し始めても、
ラリーになる前にこちらが思い切り打ち返してしまう。

だから相手も段々と面倒くさくなってきて、
そのうちにコートから去っていってしまう。

そうやって自分の考えを通してきたのかもしれない。

あるいは、必死になって守っていたのかもしれない・・

 

 

この生活を始めてから日々解放感を感じている。

身体中に塗り固められていた価値観が一つ一つ剥がれ落ちていき、
日に日に身体が軽くなっていくような感覚がある。

「まあ、別にいいか」

数日前には、もう4年ほど断っていたお酒を解禁した。

別に飲みたくはないので我慢していたわけではないけれど、
人から勧められても「飲みません」と返す刀で一刀両断していた。

しかし田舎のおばあちゃんから同じ言葉をかけられた時、
「まあ、別にいっか」と不思議と思った。

今の自分だったらこの液体に逃避してしまうことはもうないだろう、と。

それを見つめる嬉しそうなおばあちゃんの笑顔に出会った時、
お酒に含まれた潜在的な効果をまた一つ知った気がした。

こんなカタチの幸福もあるんだなあ、と。

それ以来、お酒は自分の警戒対象から外れた。

要注意人物であった相手は、今では仲の良い隣人となった。

今後は良い付き合いをしていけそうだ。

 

 

なんだか甲冑を一つ一つ外していく侍の気分だ。

一つ一つの装備は硬くて、頑丈で、その分すごく重い。

だからきっと外した時に驚くほどの解放感を感じるのだろう。

これまではその重々しい甲冑が自分を守ってくれていたけれど、
これからはもうそこまで厳重に自分を守る必要はない。

なぜなら守るべきものがもうそこまで多くはないからだ。

別に裸でいたとしても大して問題はない。

今は警戒すべき相手が自分の周りにはいないから。

ただまあ外した甲冑を組み立てて客観的に眺めてみると、
いやはやよくここまでの装備を身に纏って生きてきたものだなと思う。

「何をそんなに守るものがあったのやら・・」

やたらと大げさなその装備を身に纏った自分を想像すると、
なんだかちょっと滑稽に思えてしまう。

だけど、そう思っても、これまでの自分の行動が間違っていたとは一切思わない。

なぜならこいつを身に纏っていたからこそ、自分は自分らしくいられたのだ。

このやたらと大げさな甲冑が、
世間に生息するドリームキラーたちの口撃から見事に自分を守ってくれた。

だから僕はこの甲冑に心から感謝している。

 

本当にありがとう。

そして、今までお疲れ様でした。

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