2019/06/05

潜在意識で求める対人関係

 

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振り返ると不思議なものです。

僕は11歳から口習不安を抱えていて、
他人との会話すら躊躇していました。

ところが・・高校時代のアルバイト、
そして大阪で選択した仕事は接客業だったのです。

選択肢が他になかった、ということはないと思います。

探せば工場や倉庫の仕事、テレフォンアポインターなど、
人と直接対面する機会の少ない職種はいくらでもあったと思います。

心理学を少しでも学べばわかりますが、
人間には「顕在意識(けんざいいしき)」「潜在意識(せんざいいしき)」があります。

簡単にいうと、顕在意識は僕たちがいつも頭で考えていることです。

(お金が欲しい)(ブランドのバッグが欲しい)(おしゃれな部屋に住みたい)

このように自分でもハッキリわかること、それが顕在意識です。

それに対して潜在意識は自分ではよくわかりません。

頭の中で考えてはいるけど深いところにあるので、
自分でもハッキリとはわからないことなのです。

顕在意識と潜在意識はよく氷山に例えられます。

氷山というのは、海上に見えているのは
全体の3%くらいの大きさでしかありません。

海に隠れた97%の部分こそ、
氷山の本当のスケールのデカさを示しています。

なにせ沈まない船と言われた巨大なタイタニック号を沈没させたくらいですから。

人間の意識も氷山と同じように、
自分でもわかる顕在意識は人間の意識の3%に過ぎません

潜在意識ではもっと膨大なことを考えています。

自分では想像もしていなかった欲望や、
気付いてもいない失敗の原因などが
この潜在意識には含まれているそうです。

僕が接客業ばかり選択していたのも、
もしかすると潜在意識による考えの結果なのかもしれません。

人と関わる仕事がしたい

このような気持ちが深いところにあったのかもなあ、などと考えたりします。

 

大阪に来た僕は飲食店で働き始めました。

高校時代のアルバイトと同じように
ホールスタッフとして接客をこなしました。

大阪の中心部、歓楽街のど真ん中にあるこの飲食店は、
カウンター数席と個室2室ほどのこじんまりした店舗です。

歓楽街は家賃が高いため、1つのビルに小規模な飲食店が密集しています。

そのようなお店はどこもカウンター中心の形態で、
ある程度のキャパを確保するため通路が狭かったり、
荷物置き場がないこともザラです。

のような狭い店内なので、お客さんと接する距離が必然的に近くなります。

おしぼりを手渡しする場面、
オーダーを聞く場面、
料理をテーブルに出す場面、
それらの場面は高校時代の大規模な飲食店とは
比べものにならないほどの距離感で行われました。

とてもまっさらな状態で臨むことはできません。

この飲食店は5階建のビルの1階に入店していて、
道路沿いに入口があります。

ビルの奥にある階段は薄暗くて人通りがほぼありません。

この階段下の一室がドリンクやアルコール類のストック(倉庫)になっていました。

僕は生ビールの樽やドリンクを補充するその数秒を利用し、
タバコに一瞬で火を点け、歩きながら煙を吸っていました。

そんな短い時間では3吸い、4吸いくらいしかできません。

それでもタバコの香りをまとっていれば安心して接客ができました。

 

そういえばこの仕事でちょっとした衝撃だったのが、私語が多かったことです。

僕は高校時代にアルバイトをしているときも、
私語をほとんどしませんでした。

仕事をしている時は私語をしてはいけないと思っていました。

誰かにそう言われたのかちょっと覚えていませんが、
僕のなかでは仕事中に私語をすると怒られるという認識だったのです。

大阪の飲食店ではお客さんがいる時でも
みんなけっこう私語をしていました。

かといってヤル気のない、プロ意識の低い店というわけではありません。

そのエリアではそこそこ有名な店でした。

先輩に営業中話しかられた僕は戸惑いました。

(えっ?いま喋っていいものなの?)

無視すると「おい!」って感じで返答を求められます。

仕方なく返事をしたり、かなり先輩に合わせるように会話をしていました。

(大阪はやっぱりお喋りの町なんだな)そんなふうに思いました。

かと言ってこちらから先輩に喋りかけると怒られました。

「おい、ちゃんとお客さん見てろよ!」

僕はこの現象の意味がわかりませんでした。

(なんだこれ?喋っていいのかダメなのか、どっちが正解なの?)

喋らないとつまんない奴だと思われるし、
かといって集中して仕事をしていると、
「なにマジになってんの?」みたいな態度をされるし。

どうすれば先輩たちにうまく溶け込めるのか全くわかりませんでした。

だってマニュアルがないんです。

「こういう時は喋っていい」「こういう時は喋っちゃダメ」

それをマニュアルにわかるように書いてないからどれが正解なのかわかりません。

けっきょくこの職場の人たちとは、
一度も連体感を感じることはありませんでした。

とりあえずみんなは今日の売上目標とか何回転させようとか、
共通の目的に向かって頑張っていたようですが、
僕がそれらをシェアされたことは一度もありません。

ホールスタッフとして滞りない仕事をしながら
嫌々先輩たちとの会話をこなす。

そんな状態の職場に全く魅力を感じませんでした。

結果、この仕事はわずか1年弱で辞めてしまいました。

 

20歳を迎えた僕は、不動産屋の営業マンになっていました。

飲食店を辞めてから派遣の日雇いスタッフのアルバイトをやっていましたが、
時給や固定給で働く仕事にはなんとなく限界を感じていました。

一度日勤と夜勤のダブルシフトを数日続けた結果、
真っ黒い血尿と38度の高熱を出して事務所で倒れました。

病院に行くと「過労です」と診断されました。

その時に肉体労働の限界、
そして時間給だとしてもある程度上限がある、
という報酬の限界を感じました。

そこで歩合給の仕事に挑戦してみたくて営業マンを選択しました。

こんなことを書くと元々起業する意思が強かった、
などと思う人もいるかもしれませんが、
僕には仕事しかありませんでした

大阪には遊ぶ友達も家族も彼女も誰もいません。

仕事しか自分の存在価値を認識するものがありませんでした。

自分の人生を変えたいという強い意思がありました。

そのエネルギーの矛先がまたま仕事だった、ただそれだけの話です。

 

営業マン時代の仕事は、店舗に来店されたお客様にカウンターで諸々の提案をするという仕事でした。

・カウンター越しに向かい合ったお客様
・お客様からヒアリングして希望を聞き出す
・お客様に資料を提示しながら提案をする

カウンター1枚を挟んで対面でお客様と会話するというスタイルです。

しかもこの会話は7、8時間ぶっ続けになることもありました。

これはちょっと未体験ゾーンです。

それまでもっとも近距離で会話したのは
おそらく中学時代の彼女だと思います。

ただそれも顔を反らしたり自分から距離をとったり、
自分である程度コントロールしていました。

けれど接客中にそんなことをしていては仕事になりません。

一度も目が合わないような店員さんにお金を払いたい人などいないはずです。

これはかなりの難題でした。

まず接客前には確実にタバコを吸います。

タバコの香りなしに対面で人と会話するなどとても考えられません。

そしてお客さんが資料を見て悩んでいる時に、
スキを見て席を立ち数秒だけでもサッとタバコを吸いに行きます。

が・・すぐに限界は訪れます。

長時間接客するときや、一生懸命営業トークを展開している時など、
タバコの香りが完全に口から消失してしまうときがあります。

こんな時に相手の仕草が気になり出したら仕事どころではなくなってしまいます。

そんなピンチをしのぐために思い出したのが、
小学校の時の合唱です。

僕は先生の熱意に応える生徒を演じるべく、
一生懸命な表情と大きな口、
ノリノリに体を揺らすという完全なる芝居に打って出ました。

それを応用して生まれたのが・・“立ち上り接客術です。

相手に伝えようと一生懸命になると、身振り手振りが多くなります。

それはそのうち立ち上がって全身で表現されます。

特に不動産の場合は設備や部屋の感じなど、
目で見てみないとわからない部分が多いため、
お客様にイメージを伝えることが重要でした。

この立ち上がり接客術がどれだけ画期的かというと、
あなたがもしケータイショップに行き、
カウンター向かいの店員さんが頻繁に立ち上がって
説明する人だったらどう思うでしょうか?

「この機種はですね、カメラの画像がこんなに美しいんです!」

たぶんウザくてしょうがないですよね 笑。

そう、カウンター越しに資料を提示するような接客なのに
ただ単に立ち上がったりしていると、
お客様からしたらウザったくてしょうがありません。

落ち着いて座って話をしてくれ、という感じになってしまいます。

だからまずはお客様をこちらの話に引き込む必要があるのです。

こちらの話に引き込んでから、身振り手振り、
立ち上がって情熱的に話をしていく必要があります。

これは営業という結果を求められるプレッシャー、
そして口習不安という、二つの恐怖と不安の強い気持ちが偶然生み出した、
ピンチをチャンスに変える起死回生の戦術だったと思います。

 

ちなみにこの時期にはタバコ以外の口習対策は行なっていませんでした。

例えばエチケットスプレーを使用することもできたと思います。

たしか最初は会社に持って行きました。

けれど他の社員の前でスプレーを使用するのは、
自分の口が臭いと言っているようで嫌でした。

他の人に自分から口習のことを
バラすようなことはしたくありませんでした。

仮に隠れて使ってもエチケットスプレーの効果は
10分もすれば消えてしまいます。

そんなもの長時間の接客ではあっという間の話です。

頻繁にシュッシュしている時間はありませんし、
なにせそんなことを気にしていては仕事になりません。

だから突貫工事的に、持続力の高いタバコの香り、
そして立ち上がって距離をとる接客の二つでピンチを凌いだのだと思います。

 

ただし・・どれだけ対策を講じていても・・ふとした瞬間にそれはやってきます。

 

僕が夢中で話をしていると、お客さんが一瞬「ウッ!」というしかめっ面をします。

そして左手を鼻に、ハンカチを当てるようにしてふさぎます。

(あっ、いま臭いと思われたな・・。)

夢中で接客している途中でこの動作に気づき、
口習の不安が頭をよぎります。

一度不安を感じてしまうとそれを無視することはできません。

(ああ・・どうしよう・・。)

あーだこーだと余計なことを考えていると、
目の前の接客という仕事に集中できなくなってしまいます。

そして自分の熱意もいつの間にか消えてしまい、結果、
契約もアポも取れずにお客様とさよならすることも何度かありました。

こんな不安、本当に邪魔でした。

(口習さえなければもっと純粋に仕事を楽しめるのに・・。)

僕の口が臭くなければ・・そんなこと、もう何回考えたかわかりません

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