いま分岐点に直面しています

 

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〝我々は試練の時を前にして「正しいこと」か「楽なこと」かの二択を迫られる〟

これは、あるファンタジー映画の劇中におけるセリフです。とある魔法学校のとある校長先生の言葉。主人公や生徒たちはこの校長の言葉を信じ、最後まで悪の魔法使いと戦い抜きました。それによって死んだ者もいたけれど、生き残った者たちは皆、尊厳を失うことはなかった。

この平和な世の中にあって、「死ぬかもしれない」なんて二択を迫られることはまずありません。正しいことを選択しても、せいぜい周りからバカにされるか、あるいは孤独を余儀なくされるか、くらいのもの。己の生死を賭けた戦いにまで発展することはない。

ただ劇中の二択と同様、楽なことを選択した場合には、そうした者たちと同じような運命をたどることになるかもしれない。つまりは尊厳を失ってしまう、ということ。その尊厳とは人間として、などという大それた話ではなく、自分が自分であるために、という個人としての尊厳。

正しいことは人によって違うと思うけど、自分にとっての正しいことは、自分の気持ちに正直であることです。それが失われてしまった時、あるいは自分の気持ちに嘘をついて楽なことを選択した時に、作家・大矢慎吾の尊厳は失われてしまいます。

今の自分にとっての楽なことは「とりあえず書く」ということです。何も掴めていないまま、とりあえず思いつくままに原稿を書き進めてみる、という選択。

それは、〝社会〟というものに当てはめた場合には、その多くが正しい選択肢となります。なぜなら、社会では完成度よりも期限や効率の方が重視されるから。ひとまず終わらせる、とにかく間に合わせる、といった突貫工事的な姿勢が、社会では求められることが多いです。出来ませんでした、というのは通用しないからだと思います。

最初は自分もそういう姿勢で書いていました。技術的に劣っていても、全然面白くなくても、ひとまず一冊の本を書く、という経験をたくさん経ようと思って書いていた。最初からうまくできるわけがないし、駆け出しの頃から完成度を追求していたらいつまでたっても経験値が増えていかない。まずは物書きの仕事をひと通り経験することを最重要課題としていました。

けれど、その段階はもう終わった。今は、それらの経験を踏まえてどんな作品を生み出せるのか? という〝答え〟の段階に差し掛かっていると思う。

もちろん現時点においても完成することはない。というよりも、完成することなど永遠にない。完成された瞬間、作家としての生命は終わりを告げるだろう。だからこれは完成度の話ではない。

自分がいま直面しているのは「覚悟」の話。

自分が思い描いたものを具現化させる最善の方法を最後まで諦めることなく追求するのかどうか、ということ。結果的に何を書いたのだとしても、それが最善であると心から言い切れるところまで手を尽くしたのかどうか、ということ。最善であると言い切れないのであれば、それは単に妥協しただけであることを意味するから。

妥協することと、最善を尽くすのは、まったく意味が違う。最善を尽くしたのであれば、自分の尊厳が失われることは絶対にないから。

いま自分が迫られている二択は、今後の作家人生を大きく左右することになると、そんな予感がしています。だから絶対にこの分岐点から目を背けてはいけない。

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