2022/08/14

お盆。神棚に拝む

 

この記事を書いている人 - WRITER -

ついに暴風と豪雨の勢力が上空一帯を支配する、との煽りはてんで空振りに終わったこの数日間。夫婦で堤防沿いを悠々と闊歩し、洗濯物は堂々とベランダに晒した。己の瞳を通した青空に翳りの気配など微塵も見受けられなかった。

お盆真っ只中。世間は旅行に、里帰りにと、暦を満喫しているのだろうか。マンションの駐車場にも車の姿がほとんどない。隣家も下家も静まり返ったような無人の体。廊下を高く駆ける子供たちの奇声はいずこへ。まるで不動産屋に騙されて不人気の物件に越してきてしまったかのような気持ちになる。

我が家にはいつも通りの三日間。

各々が志向する物事と向き合い、各々の取り組みを果たしたうえ、夫婦憩いの時間を過ごす。この部屋に盆の息吹は漂っていない。ゆえに、実感がない。ご先祖らと魂の会話を交わすべき数日間とのことだが。

ここ数年、この時期がくるたび思い出したように憂いが生ずる。寂寥の想いともいうべきか、罪悪感ともいうべきか。別に大して重んじていたわけでもないくせして。離別によって自覚するとはなんとも都合の良い話。

だが、あるいはそんなものなのかもしれない。痛みがともなってようやく備わった感覚が芽吹く。魂の相伝に対する感謝の念、示すべき畏敬。それは元々あったのだ、という内なる宇宙に対する認識。惰性で責務を果たすよりかはいくらかマシか。

神棚に拝む。異教の愚など気にしない。

大切なのは心であろう。その気持ちがあればあちらにも伝わると、そう信じて。

この記事を書いている人 - WRITER -
 

Copyright© 売れっ子Kindle作家 大矢慎吾 , 2022 All Rights Reserved.