2021/08/23

タバコが手放せない

 

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部活に真剣に取り組むわけでもなく、
勉強に打ち込むわけでもない。

たむろする以外に親しく遊ぶ友達がいるわけでもない。

彼女がいたのも高校1年の時だけです。

そんな高校時代は僕にとって、
ちょっとしたリハビリだったかもしれません。

引きこもりがたまに部屋から抜け出して社会見学をしていた

こんな表現が最もしっくりきます。

いきなり大きな変化を起こすような行動をするのではなく、
少しづつ、少しづつ、家族以外の人間と会話をして小さな関係を構築していきました。

今日は1人と会話できた。
今日は3人と会話できた。
何十人という女子と会話ができた。
男子の友達が1人できた。
ケータイ番号を交換できた。
友達の家に遊びに行けた。

小さな行動を積み重ねて集団の中で生活する感覚を取り戻す。

そのための時間だったのかもしれません。

3年間という時間は、
緩やかな変化を実感するために、
十分なゆとりを僕に与えてくれました。

 

高校時代は友達の紹介で飲食店のウェイターのアルバイトをやっていました。

部活も勉強も熱心でない、
親しく遊ぶ特定の友達もいない僕は、
休日が暇で仕方がありません。

たしかアルバイトを始めたのは高校2年の時からでしたが、
休みの日だけでなく平日もほとんどアルバイト先にいました。

何度か僕の通う高校の先生が
お客さんとしてご飯を食べに来ました。

もちろん僕が働いている事実は知りません。

見つかれば即停学処分です。

このようなニアミスが起こっても即座に皿洗いに
持ち場を変えてくれる理解のあるアルバイト先でした。

そういうこともあって居心地がよかったのです。

 

普段はウェイターなのでお客さんと直に対面します。

席を案内して水を持って行き注文を聞いて料理を出す。

この一連の流れのなかで、
何度かお客さんに顔を近づけて話す場面があります。

お客さんもそうなのですが、
一緒に働く他のバイトメンバーとも
近い距離で顔を合わせる瞬間があります。

このバイトメンバーは他の高校含む
同世代の高校生たちだったので、
学校と同じように会話には気を遣います。

そのような場面でも
僕に自信を与えてくれたのがタバコでした。

できたての美味しい香り漂う料理を運ぶ仕事ながら、
タバコのニオイを身にまとわなければ接客することはできませんでした。

そのためお客さんが途切れた瞬間や
他のバイトの子が動いてくれている隙を見ては、
こまめにトイレに駆け込んでタバコに火を点けていました。

 

口習と長年付き合っていると、
自分がどんな感覚の時にニオうのかがわかってきます。

例えば僕の場合はお腹が空いている時でした。

ご飯を食べてからしばらく時間が経つと、
胃の奥の方から不快なニオイがあがってくる感覚がありました。

自分の手で口をふさぎ「ハァ〜〜〜〜」
溜めた息のニオイを嗅ぐと、やっぱり自分でもニオう感じがします。

このバイトには長時間のシフトもありました。

飲食店だけでなく複合施設になっていて、
ゴルフ場やペンションもある大きな施設でした。

早朝からペンションで働くシフトもあれば、
夕方から夜まで飲食店で働くシフトもあります。

希望すれば1日16時間ほど働くことも可能でした。

MAXで働くシフトを組んだ場合、
早朝5時から夜22時まで働きます。

夏休み中はよくこのMAXパターンに入っていました。

途中休憩はあるにしても働き詰めです。

そうすると1日の中で空腹の時間に
人と接することが多々あります。

そんな時も隙を見てトイレに駆け込み、
こまめにタバコの香りを身にまとっていました。

余談になりますが、
高校生で時給700円という厳しい報酬契約ながら
このバイトの最高月収は12万円でした。

ある時期から親から貰うお小遣いを辞退し、
“欲しいものは自分で稼いで買う”
という意識で生活していました。

このような意識はいまの僕の
起業家精神の一端を担っている
そんなふうに思う時があります。

話が逸れましたが、
空腹の時やふと自分のニオイが気になった時には
トイレに駆け込んでタバコのニオイを身にまとう。

そうやって口習の不安と戦いながらアルバイトを続けていました。

 

別に自分を弁護する気もなく、
また推奨する気も全くありませんが、
タバコの存在は僕に勇気を与えてくれていました。

ニオイの悩みを解消するものはいろいろあると思います。

そのなかで未成年ながらタバコを選択した僕は無法者かもしれません。

けれどコンプレックスを抱えた人間にとって、
「なにか1つ」自分を守る武器があることはおおいに心の支えになると思います。

当然その代償として
“これがなければ不安”
という状態になることもあります。

そういう事態は起こるかもしれませんが、
それも仕方のない事だと思います。

武器に勇気をもらえたから高校生活を少しエンジョイできた、
それは僕にとって疑いようのない事実です。

 

 勘違いでもなんでもいい
人はなにか1つでも武器があれば
それだけで生まれ変わることができる

 

僕はこのように確信しています。

別にタバコを勧めたいわけではありません。

なにか1つ心の支えになる武器を手にすることも大事だという話です。

「お酒・タバコは20歳になってから」ですよ。

 

さて、僕にとって大事なパートナーであるタバコとも、
この数年後にはお別れすることになります。

そしてそこから本気で口習と向き合い、
真っ向から口習に挑む本格的な戦いが始まります。

僕と口臭の戦争はここから過酷な局面へと突入していったのです・・。

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