2021/08/23

会話を消費したくない

 

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妻を見ていると、女性はやはり男性よりも優秀であることを再認識させられます。

テレビを観ながら同時進行でスマホの画面をスクロールさせている。インスタグラムを見ているのだろうか。そう思っていたら、スマホの画面を見たままいきなり笑い声を上げた。インスタの画像に反応したのではなく、テレビから聞こえるタレントの放ったボケにウケていたのでした。

いや、信じられない。僕だったらそんなことはとてもできません。

きっとテレビから笑い声が聞こえたタイミングで、「えっ、もっかい巻き戻ししていい?」とリプレイを要求するだろうと思う。スマホをスクロールさせることに一杯一杯で。たとえそれがあまり興味のないインスタ(というか本来は全く見ないけど)の画像であったとしても、〝気を抜いて見る〟ということができないがために、テレビの音の方には難聴になってしまうと思う。同時進行で何かをすることがどうしてもできないのです。

脳科学者の話によれば、それは脳の構造の違いからくるものなのだそうです。

人間の脳みそは右脳と左脳に大別され、両者の間には「脳幹(のうかん)」という組織が挟まっていて、文字通り幹の役割となって両者を支えています。諸説ありますが、一般的には感覚的な思考に使われる右脳、論理的な思考に使われる左脳という分類がなされ、それぞれの思考は脳幹を通して交流、あるいは調整されているそうです。

この右脳と左脳の思考の交流が、男性は非常に苦手。ゆえに同時進行で物事を進めるのが困難で、基本的に一つ一つ物事を消化しようとする傾向があるようです。

対して女性は、両者の思考の交流をスムーズに行うことができるので、同時進行で物事を進めることにも長けていて、集中力をうまくコントロールすることができるのだそうです。ゆえに視覚と聴覚を同時に機能させる、なんてこともできてしまう模様。なんと優れたCPUであろうか。きっと処理速度も男性とは比べ物にならないスピードであるに違いない。

その脳みその構造の違いが、女性の同時進行の嗜好や、会話のスピードの違いを生み出しているのだそうです。そう、女性同士の会話のスピードったらとんでもない。はたで聞いていると「あれで成立してるのかな?」と無駄な心配をしてしまうほど。ポンポンポンッ、と次々と話題が変わっていき、また時折大きな笑い声のうねりを上げおおいに盛り上がっている。しかもその速射砲の中においても、心の中で「こいつ、会話の流れと合ってないな」という相手の査定までしているらしい。あな恐ろしや・・社会における協調性やCPUの性能の面においても、男性より女性の方がはるかに優秀な個体であると僕は感じます。

ただそんな女性の気質を否定するわけではないですが、「早い会話」というのが、僕はどうも好きになれません。

言葉は、単なる言葉に過ぎませんが、それでも言葉以上の意味をもつ場合があるのではないか、と思う。口から発せられた言葉の裏側にある相手の感情や、思いやり。あるいはその言葉が選択されるまでに費やした思考。どのような思考の果てにその言葉をチョイスしたのか? その文脈を想像することが、人間関係における最大の醍醐味であり、会話のもつ〝価値〟なのではないかと思うのです。

まあしかし、現実社会においては、そんな流暢なことなど言っていられない場面がほとんどです。次から次へとタスクを消化していかなければいけないし、相手の放った言葉にいちいち一喜一憂していたらとてもやっていられない、ということもあります。

結果さえ伴えば過程なんてどうでもいい、という色の濃くなった現代社会においては、一つ一つの会話を嗜む余裕などないかもしれません。「いつまでウダウダ言ってんだ」などと一刀両断されることも多々あるだろうと思います。

しかしそれでも、僕は言葉を大切にしていきたいと思っています。そしてその嗜みの手段となる会話も、同様に大切にしたい。

だからこそ、ただ消費されるだけの会話には、まったく価値を感じません。適当な相槌や〝ながら会話〟で済ませられるような浅はかな話題。いわば、ひたすら間を埋めるためだけに交わされる会話。そんなものにエネルギーを消費したくはありません。だったら黙っている方がいい。それでその場が気まずくなっても一向に構わない。無理して喋ろうとしなくても僕は平気ですよ、という価値観をもっています。相手からしたらさぞ面倒くさい奴だろうと思いますが。妻の苦労が伝わりそうですね。

この価値観のせいで、長い間かなり困難な社会生活を営んでいましたが、諦めずに何度も続けていると、それなりに〝嗜み方〟も上手くなるものです。あるいは周りが「あの人はああいう人だ」と認知してくれたおかげかもしれませんね。大きな支障をきたすまでには至らず、現実社会をそれなりに泳ぐことができるようになりました。できるようになった気がするだけかもしれませんが。

 

 

会話を消費したくはない。

言葉を無下にして人と接したくはない。

それが叶わないのであれば、ひたすら無口でいるだけだ。

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