2021/08/23
口臭い女上司
「自分の息も確認してほしい。」
その妻の意外な主張に驚きました。
けれど「まぁ別にいいけど」みたいな
適当な返答をしたと思います。
なぜなら僕からしたらどうでもいいことだったからです。
というのもこれまで妻の息が臭いと
思ったことは一度もありませんでしたし、
どうせ臭いわけがありません。
僕の場合はこれまでずーっと悩んできて、
いまようやく勇気を振り絞ってニオイを
嗅いでもらったわけです。
それが“ついでに”みたいなゲーム感覚で
お願いされるのは癪に触ります。
だからまぁどうでもいいかという
若干キレ気味の返答をしていました。
はあぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜
僕の顔面に妻が息を吐きかけました。
当然・・ニオイはありません。
「うん、なんもニオイないよ。」
僕は半分ダルそうに、当たり前のように答えました。
すると・・妻がつぶやきました。
「よかったぁ・・・。」
そのつぶやき、その表情は心から安堵した様子でした。
僕はその表情の意味がわかりませんでした。
「んっ?何がよかったの??○○○(妻の名前)が臭いわけないやん。」
ぶっきらぼうに僕が言うと、妻はこう答えたのです。
「いや、実は最近自分の息のニオイが気になってた。」
・・・妻が口臭を?
そんなわけはないだろう。
妻の口習が気になったことは一度もないし、
悩んでいる様子を感じたこともありません。
すると、妻が話し出しました。
「ここ数年、仕事がずっと忙しくて疲れが抜けない。
たぶんいま胃が荒れてると思う。この前上司と話をした時に
(うわっこの人息が臭いな)と思った。その人のことは前から知ってるけど、
前はこんなに息が臭いわけではなかった。」
「最近会社の業績が悪くなってきて私たちの負担が大きくなった。
本社からの売上目標に対するプレッシャーがすごいキツい。
たぶんその上司もプレッシャーのせいで胃がやられてると思う。
だから息が臭くなってきたんじゃないかな・・。」
「私も同じようにものすごいプレッシャーを受けて毎日仕事してる。
最近朝起きた時に(あれっ?口が臭い??)って自分でも思う時がある。
手で覆ってくしゃみすると、手の平からその上司みたいなニオイがする。」
「だから自分も上司と同じようにニオってるんじゃないかと思ってた。」
まさか妻がそんなことを気にしているなんて全く気がつきませんでした。
“女性も男性と同じように口のニオイを気にしている”
このような現実をこの時初めて知ったのです。
これまで女性と口のニオイや汗のニオイなどの
デリケートな話をしたことはありません。
同性とも直接的にそんな話をすることはなかったのですが、
体育が終わって体操服を着替える時に“ワキスプレー”や
“汗拭きシート”を貸しあったりしていました。
その様子からなんとなくみんなケアしていると知っていたのです。
特に学生の頃は香水をつけ始めたり
香りの強いシャンプーを使い出したり、
僕も含め同級生の男子がニオイを
気にする様子を感じとっていました。
それは男子の方がよく動くから汗臭いものだし、オヤジは臭い、
みたいに男性の方が根本的に臭いものだからだと思っていました。
だから女性がそのようなケアをしているなんて考えもしていなかったのです。
タイミングはここしかありません。
僕は心の底にある箱を開けて
妻にも見てもらいたいと思いました。