2021/08/23
妻のトラウマ
『怒り』について・・
結婚した当初、妻はズボラだった。
ソファーでうたた寝して朝を迎えたり、
洗濯した服をあちこちに放置したり。
洗い物をしても排水溝は洗わなかったり、
掃除機をかける周期が一ヶ月以上だったり。
僕はそこまで神経質でキレイ好きではないと思うが、
一人暮らしが長いと、どんな男でも家事がそこそこできてしまう。
「やってくれている」という感謝の気持ちは感じつつも、
これは我慢できないとなれば、さすがに口を出さなければしょうがない。
そして口に出した時には、もれなく口論に発展するのだった。
ただ家事は妻のフィールドだが、
健康は二人の問題だ。
妻はとにかく歯医者に行かない。
歯が痛い、歯が痛い、と言っているにも関わらず、
いつまで経っても、歯医者に行かない。
妻は元々、偏頭痛もちなので、
歯痛は強烈な頭痛に発展する。
あまりにひどい時は仕事を休むほどだった。
僕は、当然の質問をした。
「なんで歯医者に行かないの?」
すると妻はこう言った。
「怖いから」
僕はその意味を図りかねた。
怖いというのは歯を削られること?
麻酔の注射のこと?それとも歯医者の腕?
その恐怖が痛みに対するものなら、
麻酔治療をしてもらえばいいだけの話だ。
「最近の歯医者はけっこう麻酔を使ってくれるらしいよ」
だけどいくら言っても、一向に、
妻は歯医者には行かない。
「行かないともっと酷くなるだけやで。
放っておいても虫歯は治らないんやから。
そのまま放置してもしょうがないやろ?」
「・・・」
「マジで、将来、入れ歯になるで」
「・・・」
「そんなお前を見たくないんんや!」
「・・でも怖いんやって!!!」
最後にはついに妻の方が怒る始末だった。
僕にはどうしても理解ができなかった。
「歯医者が怖い」という感情が。
だから、妻が歯医者に行かないのは、
妻のズボラな性格が所以だと考えていた。
だけどここまで抵抗されるのもおかしい。
そうして、グーグルに聞いてみたところ、
僕と同じようなグチ・怒りがたくさん投稿されていた。
そして、その投稿に対して、
たくさんの反論も寄せられていた。
見ると妻と同じようなことを言っている。
「怖いから」「痛いから」
なに言ってんだ、ほんとこいつらズボラだな、
そんなことを思って反論を読んでいると、一つの長文が目に入った。
「小さい頃に歯医者で怒られて以来、
歯医者に行くのが怖くなってしまいました。
痛いって言ってるのに辞めてくれないし、
”いやぁ、口の中が汚いね”と蔑まれたり。
口の中を異性に見られるだけで嫌なんです。
自分がズボラだってことは、自分が一番よくわかってるんです。
汚いとか、デリカシーが無いにもほどがある。
自分からわざわざ怒られに行っているみたいで、
もう二度と、歯医者には行きたくないです」
その投稿を見た時、初めて、
歯医者に行かない人たちの本当の心理を知った。
「怖い」という感情を自分の尺度で考えていては、
相手の本当の恐怖を見過ごしてしまう。
理屈では説明できない、自分でもよくわからない、
そういう恐怖だって存在するようだ。
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