2020/08/03

妻のトラウマ

 

この記事を書いている人 - WRITER -

『怒り』について・・

結婚した当初、妻はズボラだった。

ソファーでうたた寝して朝を迎えたり、
洗濯した服をあちこちに放置したり。

洗い物をしても排水溝は洗わなかったり、
掃除機をかける周期が一ヶ月以上だったり。

僕はそこまで神経質でキレイ好きではないと思うが、
一人暮らしが長いと、どんな男でも家事がそこそこできてしまう。

「やってくれている」という感謝の気持ちは感じつつも、
これは我慢できないとなれば、さすがに口を出さなければしょうがない。

そして口に出した時には、もれなく口論に発展するのだった。

ただ家事は妻のフィールドだが、
健康は二人の問題だ。

妻はとにかく歯医者に行かない。

歯が痛い、歯が痛い、と言っているにも関わらず、
いつまで経っても、歯医者に行かない。

妻は元々、偏頭痛もちなので、
歯痛は強烈な頭痛に発展する。

あまりにひどい時は仕事を休むほどだった。

僕は、当然の質問をした。

「なんで歯医者に行かないの?」

すると妻はこう言った。

「怖いから」

僕はその意味を図りかねた。

怖いというのは歯を削られること?
麻酔の注射のこと?それとも歯医者の腕?

その恐怖が痛みに対するものなら、
麻酔治療をしてもらえばいいだけの話だ。

「最近の歯医者はけっこう麻酔を使ってくれるらしいよ」

だけどいくら言っても、一向に、
妻は歯医者には行かない。

「行かないともっと酷くなるだけやで。
放っておいても虫歯は治らないんやから。
そのまま放置してもしょうがないやろ?」

「・・・」

「マジで、将来、入れ歯になるで」

「・・・」

「そんなお前を見たくないんんや!」

「・・でも怖いんやって!!!」

最後にはついに妻の方が怒る始末だった。

僕にはどうしても理解ができなかった。

「歯医者が怖い」という感情が。

だから、妻が歯医者に行かないのは、
妻のズボラな性格が所以だと考えていた。

だけどここまで抵抗されるのもおかしい。

そうして、グーグルに聞いてみたところ、
僕と同じようなグチ・怒りがたくさん投稿されていた。

そして、その投稿に対して、
たくさんの反論も寄せられていた。

見ると妻と同じようなことを言っている。

「怖いから」「痛いから」

なに言ってんだ、ほんとこいつらズボラだな、
そんなことを思って反論を読んでいると、一つの長文が目に入った。

「小さい頃に歯医者で怒られて以来、
歯医者に行くのが怖くなってしまいました。
痛いって言ってるのに辞めてくれないし、
”いやぁ、口の中が汚いね”と蔑まれたり。

口の中を異性に見られるだけで嫌なんです。

自分がズボラだってことは、自分が一番よくわかってるんです。

汚いとか、デリカシーが無いにもほどがある。

自分からわざわざ怒られに行っているみたいで、
もう二度と、歯医者には行きたくないです」

その投稿を見た時、初めて、
歯医者に行かない人たちの本当の心理を知った。

「怖い」という感情を自分の尺度で考えていては、
相手の本当の恐怖を見過ごしてしまう。

理屈では説明できない、自分でもよくわからない、
そういう恐怖だって存在するようだ。

この記事を書いている人 - WRITER -
 

  関連記事 - Related Posts -

 

  最新記事 - New Posts -

 

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。

Copyright© 売れっ子Kindle作家 大矢慎吾 , 2019 All Rights Reserved.