2020/08/03

嫉妬について

 

この記事を書いている人 - WRITER -

高校1年の時に付き合っている彼女がいた。

彼女はとても快活な子で、
明るくて行動力があるタイプだった。

引きこもりから脱却したばかりで、
大人しくて皮肉屋だった当時の僕とは、完全に真逆のタイプだ。

向こうから告白されて交際がスタートしたのだけど、
それ以降も僕は、彼女のペースにずっと振り回されていた。

当時の僕は「自分の意思」というものが無く、
とりあえず生きているような状態だったので、
活発な彼女にただボーッとくっついているような交際だった。

そんな彼女の交際は、高校1年の2月頃に
僕から別れを切り出すカタチで終了した。

彼女はそれから、ウチの高校では
知らない者がいないくらいの有名人になった。

有名なオーディション番組で募集された
超人気歌手のツアーのバックダンサーに合格したり、
芸能事務所からスカウトされて芸能界入りが決定するなど、
驚くべきニュースが次から次へと飛び込んできたのだ。

そんな彼女を男たちが放っておくはずがない。

彼女を見るために隣町のヤンキーたちが校門でたむろしていたり、
地域で有名なイケメンの先輩から告白されたりと、
あらゆる男たちの注目が彼女へ向けられた。

僕はサッカー部の先輩たちから何度も言われた。

「逃した魚はデカかったな」

皮肉屋だった僕は、そう言われる度に毒を吐いていた。

「あの女はしつこいし、うるさいだけですよ」

完全なる負け惜しみだ。

高校3年の夏、そろそろ進路を決めなきゃいけないとなった頃、
とくにやりたいことの無かった僕はダラダラとした毎日を過ごしていた。

周りは受験勉強や就職活動に必死になっている頃だ。

そんな周りの空気から逃れるように、
教室で窓の外を眺めてはぼーっと考え事をしていた。

いつも頭に思い浮かぶのは、あの彼女の姿だった。

もうすぐ卒業して、みんなバラバラになる。

もう二度と会わない奴もいるかもしれない。

そんなギリギリになって浮かぶ彼女の姿は、
彼女に対する好意の表れなのか・・?

それとも、芸能界入りする彼女と付き合う最後のチャンスを
逃してはもったいないという卑しい気持ちの表れなのか・・?

しばらくモヤモヤした状態が続いた。

卒業間際、いよいよ進路をどうするかとなった時、
僕はとうとう行く道を決めた。

「大阪に行きたい」

友達は「はあ?」という当然の反応を見せた。

担任教師も「大阪で何をするんだ?」という
教師として当然の反対意見を述べた。

自分でもなぜそうなったのかよく分からなかったけど、
ただ、とにかく何か大きなことをやりたいと思っていたのだ。

若者の浅はかな考えだ。

この決断はなぜか親にも受け入れられ、
新居の決まった僕は、一人電車に揺られて大阪へ向かった。

車中で流れゆく田んぼを眺めていた、まさにその時に、
僕は初めてあの嫉妬の正体がわかったのだ。

僕も彼女のようになりたかった。

他人から注目されて、チヤホヤされるような人間になりたかった。

それが、自分の本心だったのだ。

彼女の活躍に皮肉を言っていたのも、
自分の本心を隠すためだったのだ。

あの嫉妬の気持ちは、自分の隠れている本心を、
自分に気付かせるためのものだったのかもしれない・・

この記事を書いている人 - WRITER -
 

  関連記事 - Related Posts -

 

  最新記事 - New Posts -

 

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。

Copyright© 売れっ子Kindle作家 大矢慎吾 , 2019 All Rights Reserved.