2021/08/23
屈辱
僕は小さい頃から胃腸が弱い子供でした。
頻繁に下痢を起こしていましたし、
ちょっとでも食べ過ぎるとモドしてしまいます。
胃腸が弱いのか悪いのかよくわかりませんが、
自分の胃腸には何かしらの問題があると考えていました。
前述したように、あまりの弱さに心配したおばあちゃんが
小学生の頃に養命酒を僕に飲ませていました。
また母方のおばあちゃんからは熊の胃
という漢方薬をよくもらって飲んでいました。
この漢方薬は正式名称「熊胆(ゆうたん)」と呼ばれる動物性の生薬で、
その文字のとおり材料は熊の胆のうからできています。
かなり高額なものらしいのですが、
飲めば健胃効果があるといわれています。(ウィキペディア参照)
一生付き合っていくしかないもの・・
様々な対策を講じても僕の胃は良くなることがなかったので、
もはや自分の体質として受け入れていました。
成長するにしたがってこの体質との付き合い方にも慣れ、
少しくらい胃もたれがあろうが吐き気があろうが、
「いつものことだ」くらいにしか考えませんでした。
(やっぱりこの胃腸が口習の原因ってことなのか?)
そう考えると小学生の頃から口習に悩んでいた事にも納得できます。
また胃腸に関しては一度も病院で診察を受けた事はありませんでした。
(病院に行けば問題を解決できるんじゃないか?)
何科に行けばいいかよくわからなかったので、
とりあえず大きな病院にむかいました。
たしか最初は内科に通されたと思います。
内科で事情を説明すると消化器科に案内されました。
医 「どういう症状でお困りですか?」
僕 「・・えーと・・胃が弱いか、悪いと思うんです。」
医 「調子が悪いんですか?」
僕 「いえ・・いまは大丈夫ですが・・まあ、そういう時もあります。」
医 「はあ、じゃあなにで困っているんですか?」
僕 「・・そうですね・・まあ、実は・・。」
無性に帰りたくなってきました。
口臭というキーワードをどうしても言いたくない自分がいました。
なんというか・・“自分から言いたくない、そっちが察してくれよ”
というような気持ちだったのだと思います。
「まあそういう人もいますからね」
みたいな展開を期待していたのかもしれません。
しかし自分から言わなければ話が進んでいきません。
僕 「実は・・口習が気になるから、胃腸を検査してほしいんです。」
・・するとお医者さんはフッと鼻で笑いこう言いました。
医 「胃腸が悪いから口習がある?そんなこと聞いた事もないけどね。
まぁ、とりあえず検査することは別にできますけど。」
・・・
「おい、ちょっと待てや医者コラ!なにニヤついとんじゃワレ!?」
「人が人にコンプレックス告白するのはそんな簡単なことちゃうぞ!?
言いにくそうに、辛そうにしてる患者の気持ち考えたことあんのかコラ!」
「お前みたいなやつ医者向いてないわ!」
・・・
などと罵詈雑言を浴びせる関西の怖い人の映像が頭の中に浮かんだ気がしました。
この場面ならそんなふうに怒る人もいるのかもしれないなー、
などと妄想を浮かべたかどうかは定かではありませんが、
当然のように僕は検査を実施してもらいました。
このお医者さんに悪意は全くなかったと思います。
例えば僕が勝手に想像しているだけで、
医学的には全く的外れな事を言っていたのかもしれません。
実際にそうだったら「何を言ってるんだこの人は」という気持ちになることも理解できます。
ただ・・
“人に言いたくもないコンプレックスを鼻で笑われて否定された”
この反応に屈辱的な惨めさを痛感した、
というたしかな記憶だけは残っています。
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