生きていることを実感した朝

 

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起きたのは13時。寝たのは7時。執筆に没頭すると決まって昼夜逆転が始まります。

今日はやめとこう、と風呂上がりに髪を乾かしながら決意していたものの、ぼーっと座っているだけで思考の波が次から次へと襲ってくる。これではとても寝れない、とコンビニに缶ビールを買いに出かけました。時刻は朝五時。そろそろ夜が明けるべく東の方がぼんやりと光を帯びていました。

ママチャリを漕ぎながらふと見上げると、空がうなりをあげるように不思議な輪郭を描き出していた。向こうの空からあちらの空までどこまでも続く棚びいた雲海。まるで鱗のように、均一に波が立っていて、不自然だけど、自然にそうなったのであろう曇り空。若干蒼がかったそれは、空一面を覆った巨大な龍に見えた。なんだかイキった文章ですが、実物はほんとにちょっと不気味でした。そこに生き物が浮遊しているようにしか見えなかった。

コンビニの駐車場には数台の車が。ガラスの向こうに作業着を着た男性が何人か見える。現場の方の朝は早いらしい。ご苦労様です。こんな時間から寝酒を書いにくる作家とは社会に対する貢献度が違う。しかしそのことを省みる余裕もなく、真っ直ぐにサッポロの缶とラーメンおつまみを手に取り、レジへ。もはや体が覚えている。

「ありがとうございました〜」

40代後半と思われるいつもの男性店員さんが背中に声をかけてくれた。なぜかテンションが高いのは現場の方が常連客だったらしい。きっと苦労を分かち合える良い関係が築かれているのだろう。お互いに頑張ろうぜ、と言い合いながら今日を乗り切っているのかも。性格的に羨ましくはないけれど、そういうのもあるよなぁ、と思う。

スタンドを蹴り、ふらつき気味にサドルにまたがると、都合3分間の帰路へ。こんなに近いから甘えてしまうのかも。けれども、ここに建っていなかったら、この小さな地獄から逃避する術があっただろうか? そう思ったら、今こうして存在してくれていることに心から感謝したくなった。とはいえ、投げ銭する金もないけど。

気力を振り絞ってペダルを漕ぐ。

橋に差しかかる。

川を越える。

再び空を見上げる。

そこには、さっきとなんら変わらない不気味な雲海が広がっていた。

いや、明けてないのかよ。

やっぱり現実は、ドラマやアニメのようにはいかない。そこには開けた青々とした空が、なんていう爽快な結末は待っていないのだ。

だけど、生きてるなあ、オレ。

今日も命を使っている。

限りなく枯渇するところまで振り絞っている。

だからこそ感じられるこの実感。

不気味だけど、良い朝でした。

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