2020/08/03

見ている人はちゃんといる

 

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『侮辱』について・・

現在もそうだけど、
過去に「人材派遣」の仕事をたくさん経験してきた。

一口に派遣の仕事といっても様々な形態がある。

一つの派遣先に中長期で従事する「派遣社員」から、
その日だけ現場に従事する「単発バイト」まで、
多種多様の派遣の仕事がある。

ただしどの派遣の仕事にも共通しているのが、
派遣先にいる「現場の人間」からしてみれば、
派遣されてきた者は「部外者」だということだ。

分かりやすく言うと、派遣の者は、
派遣先のアルバイトスタッフにもコキ使われる。

組織のピラミッド図でいうところの
「最下層のそのまた下の層」に位置することになるのだ。

また現場に従事する期間が短期間であればあるほど、
派遣に対する扱いは雑になる。

「おい、お前ら、ここ掃除しとけ」
「おい、バイト君たち、邪魔だからそこに立ってろ」
「おい、そこのお前ら、暇ならどっか手伝ってこい」

与えられる仕事は誰にもできる雑用ばかりで、
一人一人の人権など完全に無視され、
ひと塊りの使いっ走りとして扱われる。

もしミスをしようものならボロクソに怒鳴られる。

相手が年上だろうが年下だろうがお構いなし。

まさに、クズのような扱いを受けるのだ。

初めて派遣の仕事に従事したのは19歳の頃だ。

派遣先は引越し屋や建築現場や配送屋など、
基本的に肉体労働ばかりだった。

こういう”現場系”の人間たちは、
とくに派遣の者を単なる道具としてしか見てくれない。

それ故、僕自身もあらゆる屈辱を受けてきた。

あらゆる辛酸を舐めてきた。

よく一度も喧嘩をしなかったなぁと思うほどに・・

そんな現場系の派遣のバイトで、
僕は過労で倒れるほどガムシャラに働いた。

ある月に、一ヶ月続く長期の現場に従事したことがあった。

とある大企業の事務所移転を請け負う現場だった。

現場に入った初日は相変わらずの扱いを受けた。

だけど僕はそのクズ扱いを一切無視し、
上からの指示を待つことなく勝手に仕事をこなした。

次にやることを察知し、すべて先回りをして動いていた。

そんなことをやっているうちに、
いつの間にかクズ扱いされることは無くなった。

与えられる仕事は相変わらず雑用ばかりだったけど。

それから半年後、
運送系の現場に派遣されている時に、
トラックが運送会社の本社へと入っていった。

助手席に乗っていた僕は荷台から荷物を下ろした。

そして荷物を倉庫に持っていくと、
突然一人のお偉いさんから声をかけられた。

「おお、久しぶりやな。頑張ってんのか?」

その相手は、あの時に長期の現場を仕切っていた人物だった。

「はい・・ボチボチです」

「そうか。またオレの現場に入ってくれよ」

「・・はい。またよろしくお願いします」

僕は声をかけられたことに戸惑いながらも、
胸の内に溢れるほどの嬉しさを感じていた。

しかもその人は「嫌な奴」として評判の人物だった。

だから僕みたいな最下層の人間に声をかけてくれたことに驚きを隠せなかった。

あれは僕にとって一つのターニングポイントとなった。

「見ている人はちゃんと見てくれている」

たとえクズ扱いされたとしても、
雑用をひと塊りの中でこなしていたしても、
良い仕事をすれば評価してくれる人が必ずいる。

その事実を僕は実体験によって知る事ができた。

そう、つまり僕自身が自分の存在価値を確認する事ができたのだ。

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