2021/08/23

親子でも越えられない壁がある

 

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“自分の免疫機能が自分の健康な細胞まで攻撃してしまう”

父の病気はこのような血液の病気です。

ということは、

1:ジュース断食で体に溜まった毒素を排出する
2:食生活を改善して健康な血液を造る

この順番で体を根本から改善すれば、
きっと難病であっても治ると確信していました。

時間はかかるかもしれない。

それでも症状は多少なりとも改善されるはずだと考えていました。

 

父に電話しました。

世間話をしながら少しずつ話を切り出しました。

「オレこの前さあ、断食してみたんだよ。
そしたらすごく調子が良くなってさあ・・
それで・・オレは親父にも断食してみてほしいと思ってる。」

すると父はこう言いました。

「断食か・・オレも昔やったことあるなあ。
仕事をしながらだったから3、4日しかできなかったけど・・
まあ若かったしな。そういうこともやったことはあるね。」

・・何が言いたいのかよくわかりません。僕は続けて言いました。

「断食して毒素を出して、食事に気をつけていけば体を変えることができる。
健康的な体になれば、自然と病気は改善していくみたいだよ。」

すると父はこう言いました。

 「そういえば昔、東洋医学のお医者さんと話したことがあるけど、
東洋医学でも同じような治療をするんだよな。
そのお医者さんは病気は我慢比べだ、とか言ってたな。
うんうん、そういえばそういうのもあるなー。」

またもやハッキリしない返事です。僕は意を決しました。

「このままただ薬を飲んでいても病気は改善しないと思う。
お医者さんも薬は症状を抑えるだけだって言ってるし。
世の中には薬以外にもいろんな治療方法があるんだよ。
オレはそのためにずっと何年もかけて情報を集めてきた。
それでようやくこれっていう情報を見つけたんだよ。
だからオレの提案を試してみない??」

すると父は・・僕を納得させるように言いました。

「まあ、あれだよ。俺の体はもう良くならないよ。
これまで長い時間をかけて病気の体になったんだから、
いまさら体が元に戻ることはない。お医者さんもそう言ってたしな。」

 「それに・・前に提案してくれて野菜ジュースを飲んだ時も、
検査の結果が悪くなっただろ?先生の指示に従わないと、
そうやってむしろ良くない方にいくこともある。」

 「先生は本当に親身になってくれているよ。
お前が色々と調べてくれるのはありがたいけど、
病気のことは自分なりにもう受け入れてるんだよ。

・・・

このあとも、
何度も何度も父の説得を試みましたが、
父の行動が変わることはありませんでした。

「せめて自然医療の先生に一度診察してもらって欲しい。」
「せめてオレが集めた本を読んでみて欲しい。」

絶対に父をなんとかしたかった僕は、
少しでも父の行動が変わるように、妥協案を提示したり、
様々な提案を父に投げ続けました。

・・しかしそれでも、父の気持ちは
どうしても変わりませんでした。

「病気のことは受け入れている。」

これは父の本心かどうかわかりません。

僕は自分の口習のことも簡単に
受け入れることはできませんでした。

あがいて、あがいて、何十年もあがき続けても
ダメだったので、受け入れるしかありませんでした。

そして受け入れたつもりでも、他人の“匂いを嫌がる仕草”を
目撃するたびにやっぱり落ち込みました。

自分にこんな弱点がなければ・・どうやったってそう考えてしまいます。

父も受け入れているとは言うけど、
簡単にあきらめきれないことを僕は知っています。

難病と口習では重みが全然違うかもしれない。

ただ気持ちだけはわかっているつもりです。

だから意地でも僕がなんとかしてやろうと思っていました。

東京の石原結實先生にも手紙を書きました。

「父が出向こうとしないから、
僕だけでもなんとか先生の話を
聞きに行かせてもらえないか?」

という相談もしました。

先生からは丁寧な返信がきて、
やはり本人がこなければ意味がないことを
教えていただきました。

父を救う方法はわかっています。

あとはやるだけなんです。

 

父を救う方法を知っているのに、父を救うことができない

 

こんなに歯がゆいことはありません。

苦しいことはありません。

もどかしいことはありません。

悔しいし腹立たしい、
誰にもぶつけようがない悶々とした怒りです。

どうしようもなく憤りを感じました

 

“病気になったら病院に行く”

それは当たり前のことです。

素人がちょっと勉強したくらいで専門家のようにはなれない、当然の話です。

主治医の言うことに従う、当然の判断です。

それが常識です。

 

常識の壁は、たとえ親子であっても越えることはできませんでした。

 

「これ以上、妙な期待はもたないようにしているよ。」

母が僕に話してくれました。

母も父の病気を受け入れる決断をしているようです。

自分のやってきたことは全てムダだったのか・・虚しい気持ちになりました。

時間をムダに使ったとか、お金をムダに使ったとか、
そんな損得勘定はどうでもよかったです。

ただ父の病気をなんとかできるかもしれない、
その方法も知っているのに、それがうまく
伝えられなかったことに虚しさを感じました。

そんな自分に無力さを感じました。

しかし、別の奇跡が起こっていました。

 

そう・・僕の口臭は消えていたのです。

 

父の病気を夢中でなんとかしようと走っているうちに、
僕自身の問題はいつの間にか解決していたのです。

そして中編にも書いた、人生最良の瞬間は訪れました。

だからたんなる偶然なんです。

僕は口習を解決しようと思っていたわけではないのです。

口習と真っ向から戦っていたわけではないのです。

一度負けを宣言して、退却して、
別の戦場で別の大敵と戦っていたら、
それは別の敵ではなく実は口臭だったのです。

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