2021/08/23
2020年を目前にして 7
『本で人は救える』
本気でそう思っていた。
だけど出来上がるのはつまらない本ばかりで、
手に取った人も最後まで読まない。
どうにか面白くしようと
物語の要素を入れ込んではみたが、
そうすると本質からどんどんずれてしまう。
人を救いたいと思えば思うほどうまくいかない・・
妻に言われた。
「人を救いたいなんておこがましいよ」
たしかに何者でもないイチ個人が
誰かを救いたいなんて勘違いも甚だしい。
お前、何様だよ? って話だろう。
だけど、そうでないなら
果たして本を書く意味はあるのだろう?
作家は文章で誰かの人生に影響を与えるもの、
僕はそうなりたいと思っていた。
それがおこがましいのならば、
一体、何の為に本を書けばいいのだろう?
しばらくはその答えを見つけることができなかった。
人を救いたいなんておこがましい。
誰かに影響を与えたいなんて自惚れ。
自分の考えを晒すことにも自信が無い。
「だったら作家を辞めるか?」
何度も自問自答した。
どれだけ本を出版しても
ちっとも売れる気配すらしない。
少しくらい売れたところで、
とても食っていけないような見返りしかない。
際立った文章力も無い。
面白い本も書けやしない。
・・だけど、それでも僕は、作家になりたい!