「 投稿者アーカイブ:大矢慎吾 」 一覧

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仮)私と私、と私 16

  2023/03/20 

 改札を出ると駅前は広場のようになっていた。駐車場はなく、車は駅の手前までしか侵入できないためおのずと広場が待ち合わせ場所になるようで、あちこちに相手を待ちぼうける男女が立って …

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仮)私と私、と私 15

  2023/03/17 

 ビルを出ると木枯らしが歩道にたまった落ち葉を吹き上げていた。帰宅ラッシュの街には、マフラーを巻いた会社員がちらほら見られ、そろそろ秋が深まってきたことをみなに知らせている。 …

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仮)私と私、と私 14

  2023/03/15 

 白い煙がもくもくと漂う店内、ちゃきちゃきと動き回る店員の愛想のいい受け答え。酔っ払い客の笑い声を容易に上回る歓迎の挨拶が店の活気を演出している。思わず、ご苦労様です、と私は言 …

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仮)私と私、と私 13

  2023/03/13 

 「みなさん、お疲れ様でした。みなさんのご協力のおかげでこの河原もかなり生き返ったんじゃないかと思います。全部で二百五十ほどのゴミ袋とその他諸々を回収できました。怪我人も一人も …

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仮)私と私、と私 12

  2023/03/11 

 秋口に入って少し気温が下がってきたのか、河原にはほどよい暖かさが広がっていた。照りつける太陽と吹きつける風のハーモニーがちょうどいい。まさに絶好の作業日和といった感じだ。   …

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仮)私と私、と私 11

  2023/03/09 

 風呂あがりのほてった体を心地よい風になでられ、私は快適な気分で扇風機の前にあぐらをかいていた。そのまま日課のストレッチに入る。しなやかさはあらゆる場面において男を虜にすること …

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仮)私と私、と私 10

  2023/03/08 

 男の何度目かの告白に対し、私は微笑を浮かべたまま黙っていた。見るともなく外の様子をぼんやりと眺めていた。  「わかってる。僕を傷つけまいとして何も言わないんだよね。そういうと …

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仮)私と私、と私 9

  2023/03/06 

 男に駅まで送ってもらい、そこで相手と別れた私は、二駅進んだところで電車を降りた。  改札を出るとスーツを着た男女の群れがどっと駅に押し寄せていた。食事帰りなのだろう、囲まれた …

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仮)私と私、と私 8

  2023/03/04 

 車はぶおおんというエンジン音を轟かせ坂を登っている。あたりは真っ暗で街灯もなく、たまにヘッドライトに照らされたカーブミラーが反射光を光らせる。途中で何台かすれ違って以来、しば …

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仮)私と私、と私 7

  2023/03/03 

 「新垣さん、でしたよね。何度か見かけたことがあったもので。この会にも参加されていたんですね。あっ、自分は斉藤といいます」  男性は額の汗を手で拭いながら言った。真っ黒に焼けた …

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