大陸には病気が蔓延していて、しかもそれは最近になってますます悪化している。仙人の話はいまいち信じ難いものの、いかんせん島にいてはそれを確かめようがない。なんだか大袈裟なことを …

　「これまでにも人はあらゆる手段を講じて病気の終息をはかってきた。君たち、宗教って知ってるかい？　手を合わせて拝んだり、膝をついて空に両手をかざしたりしている人を見たことがある …

　仙人について森に入っていくとそのうち木造の小屋が見えてきた。小屋は地面から離した土台のうえに建っていて、入り口には簡易的な階段が設置してあり、屋根のうしろから小さな煙突が伸び …

　海岸にはたしかに無人島っぽい砂浜が広がっている。細かい木の枝が筆箱をひっくり返したみたいにあたりに散乱していて、そこら中に転がったカラフルなペットボトルが陽を受けてぴかぴかと …

　あそこの島には仙人が住んでいる。おとなたちの噂が僕とコウスケを冒険に駆り立たせた。 　僕らの暮らす離島では、小さいころから親を手伝って漁に出るのは当たり前だったし、港に船が停 …

　朝靄の立ちこめる高速道路を縫うように小型の四駆者が駈けている。ぶるるるとエンジン音を奏でた白い車体が時おり弾み、灯したヘッドライトが上下に揺れている。 　そろそろ遠くの方の空 …

　山荘に到着するとそれまでとは景色が一変する。標高二千三百メートルを越える周辺一帯は、気候的に高い木が育たない森林限界を迎え、それまで視界を覆っていたブナ林の一切が取り払われて …

　ゴンドラの扉が開くと同時に、弾かれたように何人かが飛び出した。私もそのうちの一人だった。 　誰もが最終のロープウェイの時刻を懸念しているのは当然なのだが、それだけではない心理 …

　駐車場は始発前だというのにもう半分ほどが埋まっている。ほどんどが県内のナンバーだが他県からの遠征者もちらほら散見される。まったく奇特な連中がいるものだ、と、私の顔から思わず笑 …

　高山西ＩＣで高速道路を降り、国道をしばらく走ると古い街並みが見えてくる。昔ながらの木造家屋が道の両脇にずらりと並び、食べ歩きのできる軽食や土産物、器や郷土品などが販売され、国 …