「 2023年 」 一覧

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日本アルプス

  2023/02/06 

 朝靄の立ちこめる高速道路を縫うように小型の四駆者が駈けている。ぶるるるとエンジン音を奏でた白い車体が時おり弾み、灯したヘッドライトが上下に揺れている。  そろそろ遠くの方の空 …

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短編:コンビニ

  2023/02/04 

 身を裂くような風が吹き荒んでいる。別に、悲観するつもりもなければ、強いてはしゃごうとするつもりもない。ただ存在を認識し、受け入れるでもなく、あらがうでもなしに、必要な行為にで …

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コンビニ 4

  2023/02/04 

 私は呼び止められたようにぴたりと足を止め、声のした方へとゆっくりと面を回した。しながら、「いつもありがとうございます」という言葉をあたまのなかで反芻した。そこに込められた音を …

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コンビニ 3

  2023/02/03 

 意気揚々と冷蔵庫から二本の缶チューハイを鷲掴みにし、提げた買い物カゴにそれ用のスペースを繕っていると、遠くの方から靴音が早足で近づいてくるのが聞こえた。にわかに人の気配がフロ …

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コンビニ 2

  2023/02/02 

 よろめくように私はスナック菓子の棚の方へと足を向けた。ストライキに徹した脳内でぼんやりと化学調味料の蠱惑が想起され、組み立てを放棄することの悦びがよみがえり、意志を伝える間も …

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コンビニ

  2023/02/01 

 身を引き裂くような冷たい風がうっとうしい。別に、悲嘆するつもりもなければ、強がって微笑むつもりもない。ただその存在を認識し、身に受けるでもなく、あらがうでもなく、必要な行為に …

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明日から再び小説を書きます

  2023/01/31 

久しぶりにブログを書きます。 小説を書こうと思い立ってはや二年が経ちました。今年こそは処女作を発表するといっておきながら執筆の中途で頓挫し、必要に迫られた娯楽小説の分析を始め、 …

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生き様も込みで無頼派。その晩年の結実、太宰治

  2023/01/23 

順番は前後するものの川端康成氏との比較という便宜上、三島由紀夫氏の分析を先にしていた。文学の歴史においては本来、彼らが続く系譜となる。 無頼派(新戯作派)──自然主義などの既成 …

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理知と技術の文学、三島由紀夫

  2023/01/16 

氏の文学はしばしば〝人工的〟であると評される。 たしかに作品から受ける印象は、かたい。ほのかに薫り無意識が感応を示す芸術とは真逆の、意志的で、理知的で、卓越した技術により造形さ …

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