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仮)私と私、と私 8

  2023/03/04 

 車はぶおおんというエンジン音を轟かせ坂を登っている。あたりは真っ暗で街灯もなく、たまにヘッドライトに照らされたカーブミラーが反射光を光らせる。途中で何台かすれ違って以来、しば …

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仮)私と私、と私 7

  2023/03/03 

 「新垣さん、でしたよね。何度か見かけたことがあったもので。この会にも参加されていたんですね。あっ、自分は斉藤といいます」  男性は額の汗を手で拭いながら言った。真っ黒に焼けた …

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仮)私と私、と私 6

  2023/03/02 

 改札を出るとやんちゃなくらいの日差しが照っていた。それを体で真っ正面から受け止め伸びをすると、私はゆっくりと深呼吸をした。かんかんに晴れた休日、このままピクニックにでも行きた …

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仮)私と私、と私 5

  2023/03/01 

 店を出ると外はすっかり夜に覆われていた。三角に欠けた月がビルの合間から見えていた。  「ご馳走様でした。とても美味しかったです」  「気に入ってもらえたならよかったです」   …

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仮)私と私、と私 4

  2023/02/27 

 「田所さんは営業?をされているんですよね。どういった感じのお仕事なんですか」  いつものように私は定型文から引用した。  「うちは広告関係ですね。主にオンラインの媒体を取り扱 …

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仮)私と私、と私 3

  2023/02/25 

 自動扉が開くとむわっとした熱気が吹き込んできた。空はオレンジにくっきりと焼かれ、そろそろ夜の帳が下ろされようとしている。室内との寒暖差に一瞬目がくらみそうになったものの、むし …

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仮)私と私、と私 2

  2023/02/24 

 考えてみると私は、人生のかなり早い段階から、私のことを認識していたのだと思う。  まだ恋愛だとかもわかっていない保育園の頃、ある特別な視線がいつも自分に注がれているのを、私は …

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仮)私と私、と私

  2023/02/23 

 こういうのって、大人になってやろうと思うと照れるよね。  「なんかさ、大人になってからこういうのするのってさ、なんか照れるよね」  だけどアユミとのことはちゃんとしたい。真剣 …

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短編:仙人(後)

  2023/02/22 

 大陸には病気が蔓延していて、しかもそれは最近になってますます悪化している。仙人の話はいまいち信じ難いものの、いかんせん島にいてはそれを確かめようがない。なんだか大袈裟なことを …

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短編:仙人(前)

  2023/02/22 

 あそこの島には仙人が住んでいる。おとなたちの噂が僕とコウスケを冒険に駆り立たせた。  僕らの暮らす島では、小さいころから親を手伝って漁に出るのは当たり前だったし、港に船が停泊 …

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