2020/08/03

お節介が人を苦しめる

 

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『怒り』について・・

18歳の時、過去をリセットするために、
そして、本当の人生をスタートするために、
田舎から大阪の街へ出てきた。

最初に働いたのは印刷屋だったかな?

注文の入った会社へ文房具を納品するという、
なんとも分かりやすい斜陽産業での仕事だった。

二ヶ月程度で辞めてからはバーで四ヶ月程働き、
そのあと飲食店で九ヶ月程働いた後は、
肉体労働系の派遣会社に登録して毎日、多用な仕事を経験した。

当時の肉体労働系の派遣バイトにはまあ色んな人がいて、
リストラされた人、借金まみれの人、前科もちの人、裏稼業の人、
十人十色の訳アリの人たちと話す機会を得た。

僕はよく覚えていないけど、
いまテレビで売れているお笑い芸人も一人いたらしい。

そんな訳アリ集団の中で仲良くなった一つ上の先輩は、
14歳でヤクザをボコボコにして組から追われる身となり、
中学もロクに卒業もせず、長崎から一人で大阪に上阪してきた人間だった。

先輩は波乱万丈な人生を辿る人だった。

自ら不幸な方に、不幸な方にと、歩んでいくような人だった。

僕は派遣会社自体は1年弱で辞めたが
先輩とはちょくちょく連絡を取っていて、
僕が32歳で起業家として生きていた頃、
先輩は東京で一人の女性と暮らしていた。

またそこまでの人生がもう破茶滅茶で・・

やたらと気に入られた彼女の父親がヤクザで、
「絶対に事故を起こすなよ」
と言われて借りた盗難車で事故を起こして相手が大激怒。

再び、ヤクザから追われる身となった。

その後、別の女性とでき婚をしたはいいものの、
元々借金まみれだった先輩は、向こう見ずで派遣会社から独立し、
一人親方のようなカタチで仕事をしていた。

が、取引先は非常に少なく、
営業のノウハウも知らないため、
季節によっては収入はスズメの涙程度しかない。

子供が小さいので奥さんも働けない。

借金は膨らんていく一方となり、
とうとう奥さんの方から別れを切り出されたのだった。

そして、別の女性を追っかけるカタチで東京に住んでいた。

「先輩、いま何をしてるんですか?」

「いや、こっちで何か起業しようと思ってんねん」

「アテはあるんですか?」

「いや、ない。だから電話したんや。
起業してんねやろ?何か、オレでもできる起業法ないかな?」

相談を受けた僕は悩んだ。

肉体労働ばかりやってきた先輩に
頭脳労働はあまり合わないだろう。

たった一人でも出来て、しかもすぐにお金になる仕事・・

自分のリソースをフル活用した結果、
「便利屋さん」にたどり着いた。

そしてチラシのフォーマットを代わりに作り、
印刷して配るだけで、すぐにでも開業できるところまでサポートした。

ところが、数日後に先輩に電話すると、
なんとそのチラシを一枚も配っていないとの事。

「どうしてチラシを配らないんですか?」

「いや、嫁が嫌がってんねん」

「どこが嫌なんですか?」

「なんか、キャッチコピーが嫌らしい」

そのチラシのキャッチコピーはこうだった。

”借金まみれで会社からリストラされ、現在、職がありません。
子供と妻を養うために何でも屋を始めました。
元々、技術職に就いていた為、手先は器用です。
生活のお困り事、ご面倒事、何でも代行致します”

要するに、このチラシを配ることによって、
近所の人からどんな目で見られるかわかったものじゃない、
というのが奥さんの言い分だった。

気持ちはわかる。

しかし、事態は一刻を争っていた。

そんな悠長な事を言っている場合ではない。

明日にでも、お金を手にしなければ、
先輩たちは食っていく事が出来ない状態だったのだ。

僕は先輩を説得した。

何度も電話した。

その結果、先輩は、音信普通になってしまった。

後になって考えてみると、
きっと先輩は苦しんでいたのだと思う。

自分から相談した事もあるし、
僕が本当に一生懸命にやってくれたから悪いな、
という気持ちもある。

だけど、奥さんの言っている事はもっともだ。

自分から言い出した手前、どうケツを持ったらいいかわからない・・

そうして、結果、音信不通というカタチになる以外、
どうしようもなかったのだろう。

そう、あれは先輩が甘かったのだ。

先輩は、起業なんて夢を見るのは辞めて、
さっさとどこかで働くべきだったのだ。

僕が無理やりお節介を焼いても、
先輩の人生を、無理やり変える事は出来なかったのだ。

過剰なお節介は、人を苦しめる事になるのだ。

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