2020/08/03

所詮は他人

 

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20代前半の頃、付き合っている彼女がいた。

彼女はとても笑顔が可愛らしく、
愛嬌があって、明るい子だった。

また、料理上手で気遣いもできる、
何でもそつなくこなせるタイプの子だった。

そう、学級委員の女の子、みたいな。

それは彼女自身が抱えていた問題に
決して負けまいと抵抗する、その、
心の強さが現れていたのだと思う。

彼女を知れば知るほど、
彼女が抱えていた問題も知ることになった。

「男性恐怖症」

世の中には妙な性癖をもった奴らがいるらしく、
彼女はそいつらの餌食となり、まだ男性も知らない頃に、
大切な初めてを無理やり奪われてしまった。

しかも、”子供ができる行為”までされて・・

実際にどうなったかまでは聞いてないけど、
それ以来、彼女は男性を毛嫌いし、憎むようになった。

「母親の借金」

彼女の母親は人情の人だった。

初めて会った時、そんな印象を感じた。

親戚からお金を貸して欲しいと言われると断る事ができず、
消費者金融からお金を借りてまで、親戚にお金を渡していたらしい。

元ホストの彼女の父親は、
酒に酔うと手がつけられないほど暴力を振るう人で、
過去に実害が生じた為、小さい時に離婚したらしい。

彼女の弟を血まみれになるまで殴りつけたそうだ。

そのため、彼女の母は、女手一つで四人の子供を育てあげた。

生活費を賄うために多額の借金を抱えながら・・

彼女が高校生になる頃には、
その借金は莫大な金額に達していて、
母親の力だけで返していくのは限界だった。

だから彼女は早くから家にお金を入れていた。

彼女が高校を卒業してからは、
昼と夜とのダブルワークを毎日こなし、
母親と二人三脚で借金を返してきた。

僕が彼女と知り合ったのは、
そんな怒涛の毎日をもう5年以上も
続けていた頃の彼女だった。

僕は聞いた。

「なぜ、○○だけがこんなに働いているの?」
「どうして、他の兄弟は家にお金を入れないの?」

それに対して、彼女は被害者面をすることもなく、
「みんな、色んな考え方があるから」と言った。

今の僕ならば、その彼女の言葉の意味がわかる。

だけど当時23だった僕には、なぜ彼女だけが、
こんなにしんどい思いをしなければいけないのか、
どうしても納得ができなかった。

姉ちゃんや弟も、もっと働けばいいじゃん。

つーかさ、その親父は何なの?何様なの?

たまにこの部屋にも来てさ、
別に、お金を渡しにくるわけでもないくせに。

そもそも親戚は知ってるの?

お母さんが渡してるお金は、
消費者金融から借りたお金だって事。

知らない?

なんだ、それ?

おかしいだろ!

ってか、父親も知らないの?

何なんだよそれ、お前の父親も兄弟も親戚も、
オレはちょっと許せねーな。

すると・・彼女に表情はみるみるうちに強張り、
怒気を含んだ厳しい口調でこう言った。

「他人のくせに、わかったような事を言うな!」

僕はその時、自分が取り返しのつかない事を言ったのだと悟った・・。

いくら彼氏でも、僕は所詮は他人。

何十年とかけて築いた、
身内の強い絆には勝てるはずもなかったのだ。

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