2020/08/03

父の人生

 

この記事を書いている人 - WRITER -

数年前から父が病気にかかっている。

日本では数例しか報告されていない、
難病指定されていない、難病だ。

難病指定の病気は国から補助が出る。

まったく、かかり損というか何というか、
かなり始末の悪い難病だ。

またさらに厄介なのが、
特定の症状が出るわけではなく、
体の免疫機能に異常をきたす。

自分で自分の健康な細胞を攻撃してしまうのだ。

そこで免疫抑制剤によって
体の抵抗力を抑制してしまう。

その副作用で、あらゆる病気にかかりやすくなる。

だから体の調子が悪い時は悪いが、
良い時は問題なくピンピンしている。

そういう好調・不調の波の激しさが、
心の躁・鬱にも影響を与えるみたいだ。

親父の病気の原因はわからない。

働きすぎたのかもしれないし、
他に理由があるのかもしれない。

ただ父の食生活は酷かった。

野菜嫌いでまったく食べず、
ジャンクフードが大好物。

ウィンナーや揚げ物といった加工食品も好きで、
食卓にはいつも、味の濃いものばかりが並んでいた。

そんな生活を10代の頃からしてきたらしい。

そりゃあ、いつかこういう事にもなるだろう・・

人の言う事を全然聞かなかった親父も、
病気になってからは、流石に、
他人の意見に耳を貸すようになった。

そして親父の食生活は少し変化した。

野菜も食べるようになったし、
ジャンクフードやコーラも控えるようになった。

が、それでもまだ、自分で作る事まではしない。

元料理人で、抜群に料理の腕は良い癖に。

相変わらず食卓に並ぶのは、
スーパーで買ったお惣菜ばかり。

もちろんジャンクフードよりはマシなのだろうが、
加工された、出来合いの料理が体に良いとは思えない。

ただそんなのはどっちでもよくて、
一日中、家にいるのだから、
自分でバランスの良い食事を作ればいいだけの話だ。

僕は何度か父に進言した。

「自分で料理を作った方がいい。
出来合いの料理に栄養なんて無いし、
そもそも食費が高くなる」

それに対する父の返答はいつもこうだ。

「まだ祖母が生きてて、同居してるから、
オレが飯を作ると色々な面倒が生じる。
同居してると、まあ、色々あるんや」

色々ってなんだよ?

僕は母にも確認した。

「なんで、自分の体がここまでの状態になってるのに、
親父は自分で料理を作らないの?
家事をしたくないってこと? 男のプライド?」

母の返答も、いつもこうだ。

「そうやねえ・・本当は私も作ってほしいんやで。
その方が絶対に、健康にも良いしさ、
あとは、お金もかからないしね」

看護士の母は未だに父に代わって働いている。

「だけど、まあ、同居してる色々あるのよ。
だから、お父さんが作りたくない気持ちもわかる」

いや、だから、色々ってなんだよ?

ある時、しびれを切らして、
僕は二人に向かって言った。

「色々あるのかもしれん。オレにはその事情は全然わからん。
けど、それは命より大事な事なの?
どんな事情があっても、命より大事なものはないはずやろ?」

二人はうな垂れていた。

だが、そこまでやっても、
父が料理を作ることはなかった。

母もその状況を受け入れていた。

「どうして分かってくれないんだよ!!」

僕は悔しくて涙を流すほど、
やり場のない怒りを感じていた。

しかし、しばらくして、
僕はこう思うようになった。

「父の人生か」

血の繋がった親子だろうが、
父の人生は僕の人生ではない。

僕が父の人生にとやかく言っても、
どう生きたいか、そしてどう生きるのか、
それを決められるのは、父、本人だけなのだ。

他人の人生にとやかく言っても仕方がない。

たとえ、親子であっても。

この記事を書いている人 - WRITER -
 

  関連記事 - Related Posts -

 

  最新記事 - New Posts -

 

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。

Copyright© 売れっ子Kindle作家 大矢慎吾 , 2019 All Rights Reserved.